安物のレースカーテンが西日を柔らかなものにして、部屋の中が包み込まれている。
机と本棚。乱雑に束ねられたプリント。
自分が提出したものもその中に含まれているだろうなと思いながら、横目で眺める。

そんなことより、今大事なのは目の前の標的。

今日の標的は、今年度から新卒で来た新任の教師。
名をイザーク・ジュールという。


新しく見付けた標的は、気高くて、美しくて、それ故に脆い。
これを仕留めるのは僕だ。
誰かに手をつけられる前に。

さあ、どうやって堕としてやろうか





-----shooting





「先生、なんでココ、固くしてるんですか?」

真新しいスーツの中にまぶしいくらいの白いシャツ。
その下に隠れてる固いしこりを、人差し指の爪先でなぞってやる。

「……ッ……固くなどッ…」

身を捩って刺激から逃げようとする身体を、キラは壁に押さえつけて赦さない。
嘘つきな口を、塞いでやろうかと思ったが、せいぜい今のうちに鳴いていればいい、どうせこれか

ら抵抗の言葉など発せられなくなるのだから…。
そう思いなおして、イザークの言葉は無視して行為だけ先に進めることにした。

「きみ、は…これがどういう意味かわかっているのか!?」

無様にも生徒に詰め寄られて、息も少し上がっているというのに、イザークはキラのことを子ども(

生徒)扱いする。
自分こそ、どういう意味かわかっているのか。
放課後の準備室で生徒に詰め寄られて、追い詰められて、乳首を弄られて、欲情している自分を


なら、わからせてやればいい。
いじらしく服の上からの緩慢な刺激を与えるのはもうやめて、キラは乱暴にシャツの下に手を差し

入れ、腹部から胸へと手を這わせる。しっとりと汗ばんでいる肌は触り心地がよく、たどり着いた

乳頭はグミのように固かった。
指の間に挟んでやると、イザークが息を詰めた。

「じゃあ先生は、これがどういう意味なのかわかってるんですよね?」

わざとらしく顔を耳に近づけて囁く。
強情なこの獣は全く認めようとしないが、キラにとってイザークの思惑など所詮はどうでもいいこと

だった。
イザークは絶対に抵抗しない。キラは確信していた。
生徒に少しでも抵抗して怪我でもさせたら問題になるだろう。まだ就任してから数週間。ここで問

題になれば新しい就職先を見つけるのも難しいだろう。この高校は小中高一貫性の私立学校で

、就職も並大抵の学歴では難しいはずだ。それに、コネも必要だろう。

可哀想なイザーク。結局、僕に食べられる運命なんだよ。

教師なんて無粋な職業を選ばなければ、こんなことにはならなかっただろうに…。
弱みにつけこんでいるかといえば、あながち否定できない。
それでも、別に構わないじゃないか。欲しいと思ったものは、手に入れないとならない。
「逃した獲物は大きかった」なんて、そんな戯言を言うのは性に合わない。

「きっ…貴様ッ、ふざけるのも大概にしっ…アァッ」

掌から、イザークの鼓動が伝わってくる。
強情な獣ほど、肉は甘いに違いない。

「ふざけてないですけど?ああ…本気だったら赦されるってことですか」

だんだん、この茶番のような会話のやり取りも億劫になってきた。
口早に言い放つと、膝頭で下から舐るようにゆっくりと形をなぞる。
二枚の布越しにでもわかる。その形はにわかに隆起し始めていた。

こちらに悟られたということを、イザークも察したのだろう。
知りたくない、とでも言いたげな瞳は、伏せ目がちにで視線が泳いでいる。

「先生だって、見てたでしょう、僕のことを」
「こうやって…問い詰められて、嬲られて、めちゃくちゃにして欲しいって思ってたんでしょ」
「違っ……!」
「見てたでしょう?僕を」

『違う』

イザークのその言葉に偽りはなかった。
見ていたのは僕ではない。
僕の隣にいたアスランを見ていただけだ、イザークは。
キラのそばにはいつもアスランがいる。
キラは生徒会長で、アスランが副会長だからだ。
新入生歓迎会のとき、壇上に上がって祝辞を述べていた時感じた視線。
あの碧眼が捉えていたのは、アスランだった。
その視線は本当に真っ直ぐで、自分のことなど眼中にないということくらいわかっていた。

気に喰わない。だが、それでもいい。
最初に手をつければこっちのものだ。
それにアスランは鈍感だから、
イザークがアスランに気があることも、
こうしてイザークがキラに美味しく戴かれようとしている事も、気付かないはずだ。
全てはアスランの知らないところで始まって、そして終わる。

それで、いいんだよ。
ね、アスラン?
君を穢すなんて、僕が赦さないから。
アスランは何も知らないままで、僕の隣にいればいいよ。

目を細めて、さも慈しむかのような表情でイザークを見つめると、肩を震わせて凍りついた表情を

する。
いいね、その顔。とても美味しそう。


**
「痛ッ……もう、嫌だッ……」
「だから弛めないとダメって言ったでしょ。ほら、ガキみたいに泣いてても楽になれないよ?」
腹這いに組み敷いて、突き入れてもなお抵抗するイザークに、キラは容赦なく責め立てる。先ほ

どからイザークの口からは、痛い、やめろ、という言葉しか出てこなくなって、だんだんキラは苛苛

しはじめていた。
挫折など一度も経験しないまま大人になってきたんだろうなぁ。いい気味だけど、そろそろ慣れて

もいいんじゃないの?ひどい扱いで犯しているのはキラ自身なのに、ちっとも楽しくない。
イザークのモノを握りこんでも、反応はなく、だらりと垂れ下がっているままだった。
プライドの高い大人っていうのは、犯してズタズタにするよりも、よがらせた方が効果があるかも

しれない。というか、そのほうが楽しいかも。
キラは予定を変更することにした。

後ろで拘束している腕を解放してやる。動くと痛いからか、拘束が解かれてもイザークが自分で

動く気配はなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
苦しそうな浅い呼吸が室内に響く。結合している場所をツツーとなぞると、ギチギチに締め付けて

いる穴が一層締まって、キラは思わず小さなうめき声を上げた。
切れてないけど、動いたら切れるだろうな…。あたりを見渡してみても、これといって潤滑剤にな

る様な物はないし。
コレ、しかないか。
さきほどから反応を見せないイザークのソレをシュッ、と擦ってみる。
「…な、に…を…」
「先生がイってくれると、少しは痛くなくなるかな、と思って」
くすくす笑いながら、少しずつ手を早めてみると、わずかにも反応が見られ始める。
「へぇ、先生って男に突っ込まれながら擦られるのが好きなんだ?」
「馬鹿なことを言う、な……ッ!」
「ほら、そうやって大きな声だすと、また後ろ痛くなるよ。…大きくなってきたね…、可愛い」
親指の腹でぐりぐりと先端を撫ぜると、トロリとした先走りで濡れ始めていた。
「先生って、マゾ?言葉責めが好きなの?」
「馬鹿なことを言うなと…!」
「ほら、また大きくなった」
先ほどまでと同じものとは思えないくらい大きく、熱くなったイザークのものを手に馴染ませるよう

に何度も何度も擦り上げる。イザークが、キラの言葉責めに対して反応しているかどうかは定か

ではないが、キラの手淫に対して快感を示していることは確実だった。
キラを受け入れている場所も、少しずつ緩んできている。否、緩んでいるというよりは受け入れよ

うとしていると言った方が正しいのか、収縮しはじめていた。
「ねえ、もう痛くなくなってきたんじゃないの?ココ」
「痛くないわけある…か…!」
収縮にあわせて軽くツンッと突いてみると、びくっと身体をこわばらせたが、イザークから出てきた

声は先ほどとは違うものだった。
「…、ぁ……ッ……」
「何、感じてるわけ」
「感じてな…」
「前も後ろもひくひくしてるけど?」
「感じてなど…!」
そうそう、そういう声が聞きたかったんだよ。
少しずつ反応を見せ始めてきたイザークに気をよくし始めたキラは、抜き差しをせずに律動を与え

始めた。
「ねえ、先生…気持ちいい?」
「………」
「生徒に犯されて、気持ちいいんでしょ?」
「………ッ……」
「もっと、気持ちよくなりたいでしょ?中に出されてぐちゃぐちゃにされたいでしょ?」
「……や、めッ……」
手の中のものが、内腔が、ドクドクと脈打っている。明らかに、イザークは今、キラに組み敷かれ

て興奮していた。抵抗の言葉も、もう反射的なものでしかなく、身体はキラに従属されたがってい

るのがキラにはわかった。
素直になれば、楽になれるのに。本当に、大人っていうのは往生際が悪い。
それもまた、楽しいけど、ね。

律動を少しずつ大きくしても、イザークはもう痛いとは言わなかった。
床に胸をつけてされるがままになっているイザークの背中に、覆いかぶさるように胸を密着させる

。イザークの銀髪が、律動にあわせてさらさらと揺れる。顔は突っ伏しているから見えない。アイ

スブルーの瞳は何を写しているのだろうか。いつか自分を写しながら達した顔が見たいと、キラ

は思った。
片手はイザークのはだけた胸をまさぐり、もう片方は手淫を加え続ける。
キラもイザークも、まだ一度も達していない。
もういいだろう。ていうか、自分だってつらい。
一度大きく引き抜いて、それから一気に貫いた。
「ァ、アアアアアッ…!!」

それはもう、悲鳴ではなかった。

「もっと、もっと、よがってよ、ねえ」
楽しそうなキラの声が、耳元で囁く。
「い、イヤ、だッ…!アァッ!」
一度入った快感のスイッチは戻すことが出来なかった。
こんな気持ちがいいことを、好きでもない相手と営むということはどういう意味があるのだろうか。

頭がだんだん痺れてくる。身体も、同じ体位をずっととっていて痛くなってきていた。なにしろ床の

上で、ところどころ服も脱がされていて、キラと肌と合わせている背中がほんのり暖かく、結合し

ている場所がジンジンと熱かった。
自我が崩壊しそうだった。こんなのはおかしい、間違っていると思っているのに、体は気持ちがよ

くてやめたくないと言っている。言葉だけは、イヤだと否定していて、それだけが今のイザークを

支えていた。

限界が近い。
貫かれている秘部の中に、一点、快感が走る場所があることをイザークは見つけていた。きっと、

キラもわかっているはずだ。そこに当たるように、イザークの腰は自然と揺れていた。
「腰、揺れてるよ。気持ちいいの」
「…ふっ、あっ、あっ……」
もうだんだん、言葉を紡ぐことすら億劫になって、貫かれるたびに快感が漏れ溢れるかのように声

が出る。
「もう、イきたいでしょ、ねぇ…」
「ン、ア、…」
激しく腰が揺らされる。視界も揺れる。頭の中が、ぐちゃぐちゃと掻き回されている様だった。

突然、うなじに痛みが走る。キラが、うなじに噛み付いて大きく中を抉ってきた。痛みが脊椎を通

って腰に集中する。
あ、と思ったときにはもう、イザークは達していた。


意識がクリアになって、目を開けると、にっこりと笑ってこちらに顔を近づけるキラがいた。
銀糸を掻きあげて、目元に舌を這わせてくる。
「すごく、きれい」
陵辱した相手に、しゃあしゃあとそんなことを紡ぐキラが不思議な生き物のように見えた。
これからどうなるのだろう。何も考えたくない。
意識を手放せなかったイザークは、それでもなお抗うように、瞼を閉じた。
キラの手が髪を弄って耳元を擽っていた。

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shooting=狩猟

海しゃんに捧ぐ
短編なので、続きはないです(たぶん)

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